週刊仏教タイムス(第3053号)に鑿入れ式の様子を掲載して頂きました。
(以下原文のまま)
いのり大佛 鑿入れ式
愛知県岡崎市の工房で
東日本大震災で多くの住民が犠牲となった宮城県石巻市門脇町で建立計画が進められている「いのり大佛」の鑿入れ式が9月6日に造立を担当する愛知県岡崎市の石材業者の工房で営まれた。プロジェクト代表で門脇地区の浄土宗西光寺の樋口伸生住職や勧進聖として寄進活動をしている吉水岳彦氏(東京都台東区・光照院)、仏師の村上清氏など関係者が参加し、「いのり」を込めて鑿をいれた。
樋口住職や吉水氏、村上氏のほか、プロジェクトに協力する浄土宗僧侶の若林隆壽氏(東京都板橋区・乗蓮寺)、朝岡知宏氏(愛知県西尾市・法厳尼寺)、いのり大佛本体の制作を担当する「石彫の戸松」、蓮華座を担当する「磯貝彫刻」、光背を担当する「ムラセ銅器」の代表や職人らが参石彫の戸松で営まれた鑿入れ式では、樋口住職が表白で「いのり大佛」の完成により「手を合わす者がみな福徳に満ち、誰もが自らのために他者と助け合う心を持ち、真に平和な社会を和やかな心のうちに形作っていくことができますように」と祈念した。
読経と念佛が響くなか、いのり大佛を掘り出す石材に参列者全員が鑿を入れ、最後に樋口住職が遺族や縁者の思いを込めて「阿弥陀如来さまの大慈悲心によって、あらゆるいのちが必ず救われますように」と「回顧」を力強く奏上した。その後、磯貝彫刻とムラセ銅器でも造立の完成を念じ
西光寺では震災犠牲者の遺族会「蓮の会」が毎月11日に集いを開いてきた。昨年3月11日の14回期法要を終えた同寺で「いのり大佛」の建立計画を発表。丈六(約6メートル)の阿弥陀如来坐像で、愛知県豊田市産の「花沢石」を使用する。事業費は6千万円。吉水氏が勧進聖となり、多くの縁者が協力している。震災遺構の門脇小学校隣の西光寺墓地にある慰霊広場に安置する。2026年に完成予定。
絶叫のような「回顧」
遺族の悲嘆や救いを求める人々の苦悩を受けとめる阿弥陀如来像。式典を終えた樋口住職は「思いが形になる第一歩」と話し、「四角い部材の中に参列したみなが阿弥陀様のお顔を観仏していた」と一心になった法要を振り返った。回顧では感極まった。「関わってくれた遺族や募金をしてくれた人、未来の人の苦しみ。みんなの声と思いが僕の喉を使って回顧を読んでいた。絶叫のような声は僕一人の声ではなかった。」
様々な困難に直面したが、その度に自信と縁者の思いと信仰が深まり、不思議と良い方向へ進んだ。「これまでお寺を作り、仏像を迎えた人たちの気持ちを考えると、壮大で慈悲深いものだったとおもう。僧侶としてそれを味わわせてもらっている」と感慨をふかめた。
(棚井里子記者)